カルディナに大西洋を見せてやりたいが、
手前の駐車場までしかクルマは来ることができない。
絶壁の傍らからカルディナを振り返ると、
ヨーロッパナンバーのフィエスタやゴルフ、
メガーヌなどに混じった練馬ナンバーに
全然違和感がなかった。

薄い雲越しの太陽が、大西洋に道を描くようにして
海を照らしている。
白く反射して見える帯のずっと先は、アメリカだ。

約1ヶ月間、途中でカルディナを列車やフェリーに乗せはしたが、
東京の自宅から運転してここまで来ることができた。
幸いにして、致命的なダメージを被ることもなく、
カルディナとともに走り切れたことに感謝したかった。
いろいろな道を走り、いろいろな街を通り過ぎて、
いろいろな人に会った。

瞬時には思い出せないほどとても長い旅だったが、
長さは感じなかった。
ロカ岬に立った途端に、ユーラシア大陸横断を終えて
大きな感慨に浸ることになるかと思っていたが、
テレビドラマのようには単純ではなかった。

現実的にも、僕らはこのあとロンドンまでカルディナを運転して
いかなければならないから、正直なところ、
余韻に浸っている精神的な余裕はなかった。旅は、まだ続くのだ。
強い潮風が心地よかった。」

『ユーラシア横断1万5000キロ
練馬ナンバーで目指した西の果て』第14章より。

2012年1月表紙

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