パリのロダン美術館の入り口前に停められていたのは、ジャガーXJ13。
ちょうど2年前の今頃、パリ自動車ショー開幕の前日にジャガーが
同美術館で行ったメディア向けイベントのために、自社のヘリテイジセンターの
あるイギリスから運ばれてきたものだ。

XJ13はル・マン24時間レース優勝を目指して開発され、1966年に完成した。
テスト中にクラッシュしてしまい、レースには一度も参戦していない。
ジャガー社初のミッドシップエンジンレイアウトを採用しており、
5リッターV型12気筒が搭載されていた。

ヒロイックなイメージを持つXJ13はファンから慕われていて、現存していたパーツを組み立てたられた一台が世界中のヒストリックカーイベントに参加している。XJ13がロダン美術館に現れたのは、イベントのメインイベントとして発表された
「C-X75」というコンセプトカーの露払い役を務めたようなものだった。

C-X75は超小型ガスタービンエンジンをミッドシップに搭載し、それを推進力に利用するのではなく、発電し、電気で走るという凝った構成のスーパーカーだった。先進的かつチャレンジングなコンセプトを持つC-X75だったが、もちろん、すぐにそのまま発売されるわけではない。ジャガーの言わんとしたのは、「C-X75は気紛れや思い付きで発案されたのではなく、ジャガースポーツカーの長年にわたる伝統精神に基づいているわけで、言ってみれば表に停めてあるXJ13の真の後継者なのである」ということだ。そう言われてみれば、そのように理解できるし、ファンだったらそう思った方が有り難みも増すというものだろう。

2年後、ただいま開催中のパリ自動車ショーで、ジャガーは新型スポーツカー
「Fタイプ」を発表した。XJ13やC-X75などとメカニズム構成は異なるが、
ジャガースポーツの系譜に連なる新型であることは間違いない。
息が長く、実に用意周到なコミュニケーション戦略だ。
こうした取り組みは、ヨーロッパの自動車メーカーが得意とするところだ。

2012年10月表紙

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