パリのバンドーム広場では、オベリスクを取り囲むように
高級品店や一流ホテルが建ち並んでいる。

そのうちのどこかから戻ってくるはずの主人を待っている
メルセデスベンツSクラスとそのショーファー。
およそ原色というものを許さない、どこまでも
グレーとベージュが支配するパリの街並み。
それもバンドーム広場のような他所行きなところにあって、
彼はあまりにも鮮やかだった。
カジュアル極まりない真っ赤なセーターとフォーマルな
黒いメルセデスSクラスという対比。
そのメルセデスのトランク部分に寄り掛かりながら、
退屈そうに眼差しを虚空に漂わせている。
別にしもべのようにかしずかなくたって構わないのさ。
そんな彼の、というかパリの声が聞こえてくるようだった。

2013年12月表紙

CLOSE X