月報 2009年4月April


●4月2日 フォルクスワーゲン・トゥアレグ3.0TDI
 VOLKSWAGEN Touareg 3.0TDI

フォルクスワーゲン社のユーザー参加型イベント「ドライビング・エクスペリエンス」を同行取材するため、チュニジアに赴く。パリのシャルルドゴール空港からリヨン空港へ国内線で移動し、チュニジア航空へ乗り換え、中部のオアシス都市トズールへ。ここから、トゥアレグのディーゼル版「3.0TDI」で南下し、5日間、サハラ砂漠を走った。ドゥーズ、クサラギレン、マタマタと砂漠の中の小さなオアシス都市を巡り、再び、トズールへ戻ってきた。砂漠を行くのは、昨年7月の「トランスシベリア2008」ラリーで、モンゴルのゴビ砂漠を走って以来。サハラの砂は、夕陽を浴びると、赤っぽく見える。ディーゼルを積んだトゥアレグには初めて乗ったが、ほぼアイドリングから最大トルクを発生する3リッターV6はスムーズで走りやすく、こういう状況にとても合っていた。詳細については、『モーターマガジン』誌の6月号から3号連続で連載している。 


 

●4月15日 フォルクスワーゲン・ゴルフ
 VOLKSWAGEN Golf

歴代6代目に当たるフォルクスワーゲン・ゴルフのメディア試乗会に参加するため、朝から箱根へ。日本でのエンジンバリエーションは、まずは2種類。ガソリン1.4リッター直列4気筒をターボ(122馬力)、ターボ+スーパーチャージャー(160馬力)で過給する。旧型では、170馬力版では6段だったツインクラッチトランスミッション「DSG」が、新型では160馬力+7段になった。

箱根の芦ノ湖スカイラインの急峻なワインディングロードを走っても、122馬力版でも十分な加速力を持っている。パワー不足や、カッタルい感じは、ない。賢く、キメ細かく変速するDSGに、ゴルフらしい、フォルクスワーゲンらしい知性が感じられる。6代目のアピールポイントは静粛性で、その秘密はガラスに特殊加工したフィルムを挟み込んでいるところにある。これはゴルフだけのことではなく最近の流行で、大はベントレー・コンチネンタルGT各車から、小はトヨタiQまで。そして、もうじきデビューするポルシェ・パナメーラにも、サプライヤーこそそれぞれ異なるものの採用されている。たしかに、走行中の風切り音やタイヤと路面の擦過音などは、ほとんど聞こえなくなった。エンジニアの狙い通り、静粛性が高まり、“いいクルマ感”が高まったことは間違いない。

総合的な実力を判断すれば、新車で買って10年から15年以上、高いクオリティを享受しながら乗り続けることがきっとできるだろう。ダウンサイジングしたTSIエンジンと効率を高めたDSGミッション、しっかりしたボディと足回り、ホールド性とサポート性に優れたシート、使い易いリアシートアレンジメントとトランク等々。さまざまな使い途にキッチリ応えられる多用途性がこれだけ高いクルマも、ちょっと他に見当たらない。おすすめは、122馬力の「コンフォートライン」。ボディとインテリアのカラーバリエーションの少なさが、今後解決されるといい。


 

●4月22日 ユーノス・ロードスター
 EUNOS Roadster

『NAVI』で連載中の「10年10万キロストーリー」の取材で、千葉へ。ユーノス・ロードスターを、20年16万キロ乗り続けているパイロットに会った。なつかしい、ごく初期のロードスターをオリジナルコンディションのままに、今でも楽しんでいた。5月26日発売号に掲載予定。

 

●4月24日 メルセデスベンツC63AMGステーションワゴン
 MERCEDES BENZ C63 AMG STATIONWAGON

『モーターマガジン』誌の連載「プレミアムカーのこころ」の取材。今月のタイトルカーは、メルセデスベンツC63AMGステーションワゴン。編集部のある新橋から、首都高速経由で、中央高速へ。ありあまるパワーを備え、メルセデス特有のしっかりしたボディに護られ、高速移動はいたってラクチンそのもの。運転していて最も気を遣わなければならないのは、スピード違反カメラと覆面パトカーの察知ぐらいしかなかった。八ヶ岳周辺を走り、永元秀和カメラマンの撮影を行いつつ、国道を北上し、ロードサイドに見付けた食堂で美味しいランチを摂った。走れば走るほど、C63AMGステーションワゴンの懐の深さが実感させられていった。佐久から上信越道に乗り、帰京。約500km走ったが、まったく疲れなかったのはさすがだ。


 

●4月29日 フォード・グラントリノ
 FORD Grantrino

クリント・イーストウッド監督・主演作品「グラン・トリノ」を新宿バルト9へ観に行く。画材店「世界堂」の隣にできたシネマコンプレックスは新しく、事前にネット経由で座席まで指定して購入できるのは、ありがたい。いままでなら、ヒット中の映画を観に行く時には構えてしまって、開演時刻のかなり前に劇場に出掛けていたが、ネット事前購入によってその必要がなくなった。他の映画館も、このバルト9方式を採用してもらいたい。

館内は清潔で、シートも快適。新しいだけあって言うことはないのだが、ひとつ注文を付けるとすれば、昔の映画館のような大きな看板がないのが寂しい。看板を見て、ワクワクしながら暗闇に入っていく、あの感じがないのだ。そういえば、ポスターすら掲げられていなかった。DVDやネット配信でも映画が観られる時代になったのだから、演出を大切にしてもらいたい。映画館で映画を観ることは、もはや歌舞伎やオペラと同じような、“体験”になったのだから。

映画の内容については、オフィシャル・ホームページを筆頭にそれぞれ参照してもらいたい。「荒野の用心棒」以来のイーストウッド・ファンのひとりとしては、ぜひこの映画を薦めたい。大作や問題作ではないが、現代アメリカを巧みに描写し、過去との関わり合いについてもイーストウッド流に料理してある。イーストウッドが出演・監督した作品は多数あるが、この映画のクライマックスは、これまでのものとは趣きを異にしている。そこに、彼の映像作家としての変化やアメリカ社会の移り変わりが投影されている。

クルマとしては、グラン・トリノはトリノの上級版で、それぞれワイドバリエーションを備えていた。2と4ドア、ファストバッククーペ、ワゴンが選べ、エンジンも直列6気筒とV8があった。この映画に出て来るのは、2ドア・ファストバッククーペ+V8エンジン仕様だ。V8は5リッターから7リッターまで4種類の排気量を持っていた。

モメる相手が乗っているのは、旧型ホンダ・シビック4ドアセダン。エンジンフードを黒く塗り、トランクフードにウイングをくっ付けている。アメリカのアジア系やヒスパニック系の若者が乗るクルマを類型化している。オールドファッションのアメリカンマッスルカーと、日本製のキッズカーの対比。その対比が、この映画でイーストウッドが描こうとしたものを象徴している。舞台装置として、映画「ファスト・アンド・フューリアス」風に改造された旧型シビックセダンは、文句ない。

作品中のグラン・トリノは1972年製だ。うまい設定だと思う。ワイドバリエーションと、大排気量V8エンジンを普通のセダンやクーペでも選べた時代。エコや環境保護などという言葉すらなく、アメリカ車が我が物顔でふるまえた最後の時。特別なクルマでなくとも、今から見えれば、アメリカ車がマッチョだった時代。

ちょっと、イタズラ心が起こった。もし、設定を日本を移して「グラン・トリノ」を撮るとしたら、どんなクルマを設定するべきだろうか。どの時代の、何か?