小野雄司さんは、初代インサイトに乗り続けてい
た。再掲載の許可を請うメールを差し上げると返信はすぐに来て、変わらず快調に走り続けている様子が記されていた。

「インサイトの近況などをお話します
まずは、自分の手で取り付けしたボッシュの補助ランプです
取材時のときより一回り以上大きなランプになっています
自分の中で、昔ラリーをしていた気持ちが生きつずけてるのか?
ごく普通のサイズでは飽き足らず、競技用のボッシュに改装しています
添付の写真では黄色ですが最初は白レンズでした、高速を走行してるときに
石が飛んできたようで割れてしまいました、半年後ヤフオクでやっと見つけたのは
この黄色でした・・・ちょっと赤いボディから浮いているように見えてしまってますが
一段と個性的になっているインサイトになっているかな?と思います。
 
栃木県にホンダの高根沢工場が以前にありそこから生まれた「NSX S2000 インサイト」
の三車種が春の桜が咲く頃にツインリング茂木に集まる「TAFミート」と言う集まりに参加
などをしております、普段ではめったに見ることができないインサイトがたくさん集まる姿は
鳥肌てきな思いで満たされてきました。
 
インサイトの車体そのものは非常に調子は良くて、オイルの管理とガソリンを満たしているだけです
今年になって20万キロを越えた頃にサスペンションと足回りのゴムブッシュを取替えまして
満足な状態を維持しています。
インサイトの第二の心臓部、IMAバッテリーは20万キロ無交換で走っています
非常に珍しく稀で当たりのバッテリーのようですね。
 
燃費は車載の生涯燃費計は26.4km/lを示してます。
最近24ヶ月の燃費は28.7を示してます。」

週刊・金子浩久 第5号 10年10万kmストーリーアーカイブ5回
(2012年10月29日発行)




「10年10万kmストーリー」アーカイブ5

ジワッと、違う世界を知る

小野雄司さんとホンダ・インサイト(1999年型)
4年
12万7000km
写真・三東サイ

●瞬間的な好燃費には意味がない

 いま注文しても納車は来年になるというトヨタ・プリウスほどではないが、ホンダ・インサイトも生産工場のラインを増やすなどして、国内の旺盛な需要に応えている。
 しかし、そんな人気者のインサイトも、旧型は売れ行きが芳しくなかった。旧型インサイトに4年弱で12万7000km乗り続けている小野雄司さん(53歳)が購入した個体は、生産されてから2年間ナンバーが付かず、その後の2年3ヶ月間はディーラーのデモカーとして1万キロを走行してきたほどだ。その後、オートテラスという中古車店のサイトで売りに出されていたところを小野さんが見付け、140万円で購入。
 走行距離1万キロの割には格安だったので飛びついたが、納車数日後にハイブリッドシステムを司るIMAバッテリーの交換を余儀なくされた。赤信号で停車時にアイドリングストップするところまでは良かったのだが、再始動しないことが続けて起きたのだ。
「シフトレバーをニュートラルに戻し、キーをひねって自分で始動しました」
 メーターパネル内のバッテリー残量計が、走行しても増減しないという前兆も起きていた。近くのホンダのディーラーに持ち込むと、保証期間が過ぎているのに無償で交換してくれた。有償だったら、23、24万円もする。
「1万キロでダメになるなんて、いくらなんでも短過ぎじゃないですか」
 乗り方にもよるのだろうが、普通のクルマのバッテリーとは違う消耗の仕方をするのではないだろうか。
「“インサイトのIMAバッテリーは、全車、無償で交換されている”という噂話も聞いたことがあります。その後、CVTも無償交換してもらえましたし」
 10万1000キロ走った時に、不調で持ち込んだディーラーで無償で交換された。
「スロットルを戻すと、ガクッというショックのあと、ギャーッという大きな音がするようになったのです」
 CVTに問題が発生していて、異音はベルトからのものだったのではないか。交換後、症状は消え去り、燃費もカタログ値を大きく超える38.4km/lを出した。常磐高速道路の土浦ICと那珂湊IC間の往復でのことだった。
「今までで最良の値だったので、クルマを停めて燃費計を撮影しようとしたら、シャッターを切る寸前にエンジンが掛かって、38.4km/lだったのが38.3km/lに変わっちゃいました。ハハハハハハッ」
 それにしても、高速道路での走行とはいえ、38.4km/lとはスゴい。小野さんは、高速道路でなくても、下り勾配が続く道を一定のペースで走れば、好燃費になると言う。秋田県の角館から田沢湖に至る国道46号線を走った時には、燃費計の最大表示値である60km/lに達することもあった。
「瞬間的な好燃費には、あまり意味はないと思います。大切なのは、多様な状況での長距離を走った後に、好燃費であるということではないでしょうか」
 大いに同感だ。0.1km/lでも燃費が良いに越したことはないのだが、それが目的となってしまっては本末転倒だ。
快適に、安全に、荷物や人を乗せた上での好燃費でなければリアリティがない。数字だけがひとり歩きしてしまっては、ナンセンス!
「最悪のパターンは、真夏にエアコンを効かせて、ボールを6個載せて、東京の田町ハイレーンに向かう時です。15〜16km/lです」
 田町ハイレーンというのは有名なボウリング場のことで、小野さんは国体の茨城県代表にもなったことがあるほどのボウリングのエキスパートだ。お嬢さんも国体選手で、小野さんは日本体育協会公認スポーツ指導者の資格まで持っている。
 ボウリングが国体の種目になっていることも、選手が試合に6個ものボールを持参することも知らずに驚かされたが、インサイトへの積み方にもビックリさせられた。
 インサイトのシートのうしろにはIMSバッテリーとコントロールユニットが搭載されている。その上にはボードが被さり、天地寸法が浅いながらも、トランクスペースが設けられている。バッテリーの後ろ側のボードはフタとして開閉できる、容量43リッターの「パーソナルボックス」なるモノ入れ箱だ。小野さんはこの箱とスペアタイヤを取り去り、奥に広がった空間を巧みに利用して、密輸犯のようにボールケースをふたつ収めて運んでいる。フタとケースを開けなければ、まさかボウリングのボールが収まっているなんて、誰も想像できないだろう。

●自分のクルマは自分で変える

 インサイトには、さまざまな改造が施されている。ひと目見て他のインサイトと違うのは、フロントバンパーに埋め込まれたドライビングライトだろう。左右でカタチが微妙に違う。しゃがんで間近でよく見てみると、バンパーの曲線とライトの形状が一致せずに、わずかな隙間が空いている。でも、それをなんとか合わせようとして、薄いゴムをパッキン代わりにしているのだが、専用に作られたものではないために完全に塞ぐことができてはいない。ゴムのカタチも異なるから、余計に左右で見た目が異なって
いる。
 他にも、ヘッドライトをHIDに換えたり、シートをレカロ製に取り替えてある。いずれも、自分で行った。自分で使いやすいようにと、自由に改造した様子がうかがえてとても好感が持てた。クルマを、“自分のもの”にしているからだ。
「何でも自分で改造するのは、若い頃からそうしてきたからです」
 20代から30代に掛けて、小野さんは地方選手権のラリーをドライバーとして8年間戦った。カローラレビンやチェリークーペX1、サニー、ランサーなどを自分たちで改造してラリーカーに仕立てていた。
「昔は鉄バンパーだったから、ボルトとナットでラリー用のフォグライトやドライビングライトを追加できていましたけど、インサイトはプラスチックなのでドリルで穴を開けたんですよ」
 国体ボウラーにして、元ラリードライバー。スポーツマンなのである。

●ガバッからジワッへ

「違う世界を知りました。(スロットルペダルの)踏み方で、燃費がこんなにも変わって来るなんて。ガバッて踏まないで、ジワッて踏む。先を見て、道路の勾配に合わせ
て、踏んだり、戻したり。右足が“燃費版のクルーズコントロール”になりましたよ」
 面白いのは、時速90キロで走っていたのを80キロに落としても、燃費は変わらないという小野さんの発見だ。
「リアトレッドの狭さゆえに、雨の日の高速道路の入退路で、リアタイヤがズルズルと滑ることがあります」
 さすがは、元ラリードライバー。指摘が具体的だ。
 ラリーカーから始まって、軽からSUV、ヨーロッパ車まで、小野さんはこれまで様々なクルマに乗って来ている。乗っていないのはミニバンぐらい。それだけクルマ好き
で、自分で試してみないと気が済まない。だが、インサイトにはとても満足していて、他に乗ってみたいクルマも見当たらない。
「ウチのインサイトは、今のインサイトとは違う。名前だけが一緒」
 強いて言えば、5速MT版の同型インサイトか、来年2月に発表予定のホンダCR-Zだそうだ。小野さんの話を聞けば聞くほど、初代インサイトがいかに独創的だったかがわかってきた。

 

『NAVI』誌2009年9月号より転載

いまは無き『NAVI』誌で、1990年3月号から2010年2月号まで、二度にわたって長期連載していた
「10年10万kmストーリー」は4冊の単行本にまとめられている。
しかし、まだ収められていないストーリーがたくさんあり、切り抜きを収めたスクラップブックを
ときどき引っ繰り返してはパラパラやっていると、その後のみなさんの様子が気になってくる。
変わらず元気に過ごしているのか?
まだ乗り続けているのか?
それとも、他のクルマに乗り換えてしまったのか?
ボウリングボール2個入りのバッグの下にはさらに2個が入っている。
ビートのフェンダーにはお茶目なステッカーが。
「TAFミート」。小野さん提供。

●ホンダ・インサイトとは?
 1999年に発表されたホンダ初のハイブリッド車。アルミニウム製ボディを持つ2座席ボディに1リッター3気筒エンジンを搭載し、前輪を駆動する。アルミニウムを用いたのは軽量化のためで、820(850)kgに抑えられた。後ろにいくにしたがって強く絞り込まれた形状や各部の空力処理などによって0.25という空気抵抗係数を実現。軽量化と空力と組み合わされたホンダ独自の「IMA」ハイブリッドシステムによって、35km/l(10・15モード。5MT車)という優れた低燃費を達成した。小野さんのCVT車は32・0km/l。日本では人気薄の2座席クーペボディが災いしてか、販売はあまり振るわず、今年デビューした2代目が登場するまで、インターバルがあった。

インサイト以前に乗っていたクルマにも、同じようにレカロのシートを装着していた。
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車内には地図が何冊も。
インサイト2
最近のインサイト
最近のインサイト。小野さん提供。

 

小野さんとインサイトとビート。現行インサイトに乗って取材にお邪魔した。